Yukiko Yanagida's blog

柳田由紀子(やなぎだゆきこ)=むかし編集者、いまノンフィクション作家、在ロサンゼルス。最新刊『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』(集英社文庫)で第69回日本エッセイストクラブ賞。米国人の夫と二人暮らし。家事もけっこう真面目にやってます。オフィシャルサイト=www.yukikoyanagida.com

デザート・ホットスプリングス・ホテル・スパ/ロサンゼルスから2時間、砂漠の格安温泉やよし♨

 アメリカのインフレが凄まじいです。ロサンゼルスも寒くなってきたので、先週、「ホカロン」を買いに日系スーパーに行ったところ、10パック入りが税込みで約10ドル。為替にもよりますが、まあざっと1400円。いたっ。

 そうはいっても、年末が近いし、今年はよく働いたことだし、「近間の温泉に」と思い立ち、車で東に2時間の「デザート・ホットスプリングス」で2泊3日することにしました。デザート・ホットスプリングスは、避寒リゾート地、パーム・スプリングスのゴク近、20分ほどの静かな町です。

デザート・ホットスプリングスの写真
 冬のデザート・ホットスプリングスでは、「椰子の木に雪山」という珍しい風景を楽しめます。
デザート・ホットスプリングスの写真

 コロナ禍で変化したはずですが、それ以前、この町には、百軒以上の温泉付きホテルがありました。いちばん高級なのが「ツー・バンチ・パームズ(Two Banch Palms)」。6年前に日帰り温泉をした記録が以下です。

 ところが、ツー・バンチ・パームズ、調べてみると、なんと1泊(ツイン)が税込み430ドル~680ドル(約6万円~10万円)。アメリカの温泉ホテルは食事なしですから、2泊したらえらい騒ぎです。ほかに、最近評判がよいのが「アズール・ホットスプリングス・リゾート&デイ・スパ・オアシス(Azure Palm Hot Springs Resort & Day Spa Oasis)」ですが、こちらも1泊(ツイン)税込みで300ドル強~(約4万5千円~)。

 正直、デザート・ホットスプリングス自体は、田舎町でたいした所じゃないんです。こんな値段では、「近間の温泉に」といった軽い気持ちが萎えてしまいます。

 一方、この街には、ファミリータイプの安価な温泉ホテルも2軒あります。ひとつは、「ミラクル・スプリングス・リゾート&スパ(Miracle Springs Resort & Spa)」。過去に行きましたが、湯温が低すぎるし、循環で湯は汚いしということで再度滞在する気になりません。

 そこで、今回は以前にフロントをのぞいた時、わりと感じのよかった「デザート・ホットスプリングス・ホテル・スパ(Desert Hot Springs Hotel Spa)」に泊まることにしました。一泊(ツイン)が税込みで100ドル~140ドル(約1万4千円~2万円)。このインフレに、この値段は値打ちものです。

デザート・ホットスプリングスの写真
 宿泊した2階の客室から眺めた夜明けのプール。砂漠独特のピンクな朝が美しい。
デザート・ホットスプリングスの写真
 昼間のプール。温泉情緒はないです。水着も必着用。でも、中味はまちがいなく温泉で、泉質もよいです。
デザート・ホットスプリングスの写真
 プール夜景。24時間、いつでも入れるのがありがたい。これは本物の温泉の証拠です。日本でもそうですが、湯を沸かしているホテルや旅館は24時間入浴をさせません。お金がかかりますから。
デザート・ホットスプリングスの写真

 プールやジャグジー、露天風呂は全8つ。32℃~40℃と、それぞれに温度が異なります。最高が40℃の由でしたが、42℃くらいの熱さに感じました。熱湯好きな私にもばっちりでした。 

 さて、肝心の泉質について。

 ホテルによれば、地下90メートルに60℃の帯水層があり、そこから毎分760リットルを汲み上げ、適温になるまで冷まして8つのプールやジャグジー、露天風呂に送り込んでいるそうです。温泉自体は、ほぼ無色透明、無臭。分析表は以下です。

デザート・ホットスプリングスの写真

 以前、分析したツー・バンチ・パームの泉質によく似ています。つまり、日本の温泉法に照らし合わせると「ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物・炭酸水素泉」になるかと思います。やわらかいお湯で、法師、四万、玉造の日本の各名湯に匹敵します。

 なお、プールによっては、ラムネのように泡立った玉々が肌を包む湯もあります。これは、二酸化炭素濃度が高い「炭酸泉」と思われます。炭酸泉は、温泉王国・日本でも稀有な泉質で、大分県の長湯温泉が代表格。毛細血管を拡張し血行をよくする効果があるといいます。

デザート・ホットスプリングスの写真。

 ライフガードが、各プールやジャグジーの湯温を定期的に調べ、ボードに記入。日によって温度が違うので、入る前にチェックするといいです。華氏で記入されるので換算してね。

デザート・ホットスプリングスの写真

 サウナやフェイシャル・エステ、マッサージ、ネイルなどのケア施設がひと通り揃っています。サウナのみ無料。

デザート・ホットスプリングスの写真

 レストラン、バーやギフトショップ(水着、タオルほか販売)もあり。ただし、コロナ対策でひたすら室内で食事したため、レストランやバーの味や値段はわかりません。

デザート・ホットスプリングスの写真

 このホテルのもうひとつの魅力は、室内にも温泉が通っていること。温泉を冷やしたものが蛇口から流れていて飲泉も可能だし、室内の浴槽にも熱い温泉を満たすことができます。泉質は、外の温泉とほぼ同様の含有物ながらやや薄め。pH7.9の弱アルカリ性泉です(写真右の青いのはマイ桶)。

 実は、プールやジャグジーの温泉は、夕方を過ぎるとけっこう汚いです。なので、屋外の利用は、早朝、遅くとも昼間のうちに。その後は、バスルームの温泉を堪能するのがベストかと。 

デザート・ホットスプリングスの写真

 部屋は、いわゆるモーテルの造り。何ひとつファンシーなものはありません。ただし、冷蔵庫、電子レンジ、ヘアドライヤーなど、あるべきものは揃っています。

デザート・ホットスプリングスの写真

 うれしいのは、洗面台が2つあること。テイクアウトした食糧を準備したり、ちょっとした料理(サラダを作るとか、果物を切るとか)に便利です。

デザート・ホットスプリングスの写真

 各客室に、たっぷりのベランダが付いているのもうれしい。

 そんなこんなで、近場でリーゾナブルな2泊3日をたっぷり楽しみました。値段なりのよいホテルだと思います。ただし、このホテルを満喫するには、少々、英語力と交渉力が必要です。

 アメリカのホテルには、大別して3種類あります。

  1. 客を迎える前に、電球やヒーター、クーラーなどが動くかチェックして、不備があれば直しておく。
  2. 確認しない。不都合があれば客が言うので、その時直す。
  3. 不都合があっても直さない、直らない(けっこう多い)。
 ここは、典型的な2です。実際、私たちがチェックインした時にも、以下の3点が次々と発見されました。1)ヒーター効かず。2)洗面所の蛍光灯切れ。3)浴室の湯温がぬるすぎ。そして、そのたびにフロントに直しを依頼しました。すると、毎回、技師が飛んできて修理してくれました。技師は朝から晩まで張り付いている模様。それほどトラブルが頻繁ってことなのかしら? いずれにしても手間はかかりますが、すぐに直してくれるので結果オーライ。私は、近いうちに再訪するつもりです。そして、きっとまたなにか問題があり、技師のおじさんに再会するんだと思います(笑)。
パームスプリングスの写真

 初めてパーム・スプリングスのトラムに乗って山頂まで行きました。山頂は雪の別世界。行く価値ありです。トラムは大人気なので、コロナ禍仕様の装備でのぞんだ次第。

Desert Hot Springs Hotel Spa

◇address: 10805 Palm Drive, Desert Hot Springs, CA92240

◇phone: 760-329-6000、800-808-7727

◇チェックイン=午後4時、チェックアウト=午前11時。ただし、チェックイン前やチェックアウト後にプールやジャグジーの使用可、無料。

◇日帰り温泉あり(シャワールーム、着替え室あり。ただし、ヘアドライヤーやシャンプー、リンス、石鹸、タオルなし)。

◇水着着用。