Yukiko Yanagida's blog

柳田由紀子(やなぎだゆきこ)=むかし編集者、いまノンフィクション作家、在ロサンゼルス。最新刊『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』(集英社文庫)で第69回日本エッセイストクラブ賞。米国人の夫と二人暮らし。家事もけっこう真面目にやってます。オフィシャルサイト=www.yukikoyanagida.com

今も残る、アメリカのドライブインシアター体験記

 ドライブインシアターなんて、とうの昔に消えたものと思っていました。ところがどっこい今も現役と最近知りました。とはいえ、現在全米のドライブインシアター数は、1950年代の全盛期に較べ1/10以下のわずか350軒ほど。過日、そのうちのひとつ、ロサンゼルス郊外の「Vinleand Drive-In 」を訪ねました。

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 ドライブインシアターの始まりは1933年6月6日。その夜、銀幕を飾ったのはアドルフ・マンジュー主演の『Wives Beware』だったという。

 初めて行ったドライブインシアターは、意外なことに大盛況。開場前からゲートに車の行列ができ、夕方の開場と同時に広い野原に次々と車が入って行きます。が、なぜか、スクリーンにお尻を向けて駐車する車が多いのです。はて?

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 上映前のスクリーン。大空が茜色に染まる頃、映画が始まる。チケット代は一般劇場と同じ。2回上映、入替なしの劇場も。

 すると、「わー、海水浴場みたい!」と、はしゃぐ同行の友人の声が聞こえてきました。ふと見渡せば、人々がチェアを置いたり、ゴザを引いたり、お弁当を広げたりと、いつの間にか周囲はまったき浜辺モード。トラックの上や、ハッチバックをパカっと開けてせっせと寝床を拵える人たちまでいて、〈いきなり自宅がトランスファー〉といった風情です。なるほど、それでお尻から駐車したわけね。

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 週末でお疲れなのか、こちら(↑)のお父さんは毛布に包まり本気で寝ちゃってるし、あちらでは、騒がしい子どもを怒鳴りつけるお母さんが、今にも鍋釜持って煮炊きを始めそうな勢いです。一方、小洒落たカップルは、ハッチバックをバーカウンターに見立ててカクテル各種を並べ始めました(ドライバー以外の飲酒は可)。あー、みんな、なんてアメリカンなやりたい放題。

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 子どもたちもすっかり浜辺モードでお食事中。

 さて肝心の映画ですが、星空の下の巨大スクリーンはさすがにド迫力でした。しかも、車内という〈自分空間〉に居つつ、何百台もの車と一緒に映画を観ているイベント感覚もあり、一粒で何度もおいしいドライブインシアターなのでした。

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 帰りがけ、夜空に浮かぶベッドシーンが目に飛び込みました。ここはドライブインシアターには珍しくシネコンで、隣の広場で成人向け映画が上映されていたのです。「未成年立入禁止」の掲示はあるものの、スクリーンが目隠し柵の遥か上にあるものだから丸見え。あーあ、こんなところもとってもアメリカンてか、雑駁てか。

 夏休みにアメリカ旅行を計画中のみなさん、「訪問地+Drive-in Theater」でネット検索してみてください。多少遠出しても、ピクニック気分で夏の宵を過ごすに充分足る体験かと。 

       

Vinleand Drive-In Theater

443 N. Vineland Ave., City of Industry, CA

phone:  626-961-9262

開門:日〜月7:30pm〜、金土7:00pm〜

料金:日〜月=大人$9.00、子ども$3.00。金土=大人$9.50、子ども$3.25

http://vinelanddriveintheater.com

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 Vineyard Drive-Inでは、かつての映写機や自立式スピーカーを展示。現在、音声はFM経由なので車内でもバッチリ。

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 昔はこういうマイクが地面に立っていて、その横に車を停め窓を開け放して音声を聴いたそう。アメリカン・グラフティですね。