このブログで他にも紹介してきたように、アメリカにはいっぱい温泉がある。
- ヨーロッパの伝統を継承した「飲泉中心」の療養温泉。
- 自然回帰派のヒッピーが保護する「大自然」の露天温泉。
- 家族総出で楽しめる保養地の「温泉プール」。
でも、日本人好みという点では、ここがピカイチだと思う。カリフォルニア州中部、サンルイス・オビスポにある「シカモア温泉」。シカモアは、鈴懸の木の意。その名の通り、シカモア温泉は、鈴懸や樫の木立ちに囲まれた広大な敷地(約12万坪)に、南仏風の瀟洒な建物が立つ高級温泉ホテルだ。
では、何が日本人好みかというと——。
- 客室に露天風呂が付いているので、裸で入浴できる。
- 温泉を好みの温度に調整できるから、欧米では珍しく熱い湯を楽しめる。
- 客室にバスローブあり。レストランを含む敷地内はどこでも着用OKなので、浴衣でブラブラ感を味わえる。
- レストランがあり、グルメ料理を堪能できる。
- スタッフが親切。日本旅館のようなホスピタリティを感じる。
- 源泉が4カ所もあり、掛け流しである。
- 泉質は、源泉によって「カルシウムー炭酸水素塩・硫酸塩泉」または「炭酸水素塩泉に近い単純温泉」。うっすらと緑がかった温泉には硫酸塩が含まれているため、多くの日本人が好む硫黄の薫りがする。
- 日帰り温泉用の露天風呂が24もある。
どうです、好みでしょう? 上写真は、木立に囲まれた日帰り用露天風呂。要予約。ひとり1時間$19.00〜。湯桶がないので「マイ湯桶」を持参しよう(笑)。photograph/ courtesy of Sycamore Mineral Springs Resort & Spa
シカモア温泉の歴史は、西部開拓期に遡る。1886年、石油掘削中の開拓者が、石油ならぬ温泉を掘り当てた。そこで温泉施設を開くと人気に。20世紀初頭には鉄道も乗り入れ、サンフランシスコやロサンゼルスから千客万来。ハリウッド・スターも逗留しステイタスが向上、名湯の名を欲しいままにして今日にいたる。
1900年頃のホテル案内より。
シカモア温泉でとにかく感心するのは源泉の豊富さ。タンクで冷ました温泉を、庭の樹木にまで注いでいるというのだから相当なものだ。もちろん、客室内の水やお湯も温泉で、飲泉療法にもバッチリだ。
敷地内に源泉が4つ。人物の後ろにあるのが、4カ所の内のひとつ。
ひとつだけ残念なのは、行政の規則で日帰り温泉用露天風呂に塩素を入れていることと、温度が低いこと(40℃以下)。が、これはルールなので仕方がない。客室は源泉掛け流しなので、できれば奮発して宿泊してください。バスローブのまま喰っちゃ寝て、温泉に浸かってまた寝て、たまに森林浴を楽しんで。ノンシャランな1日は、きっとあなたを再生させてくれます。
客室は、スタンダード、スイート、キャビン(ゲストハウス)の3タイプ。すべて露天風呂付き。スタンダード・ルーム($259.00+tax〜/ハーモニー棟)が、もっとも硫黄の薫りが強く、温泉の温度も高い。日本人好みの42度も楽勝です。(左/上)は温泉入れたて、ほんのりと緑がかった透明。(右/下)少し時間が経ち、空気に触れると白濁する。
スイートルーム($429.00+tax)には、暖炉、居間、寝室、そしてもちろん露天風呂も。コーヒーメーカーもあり、コーヒーや紅茶、ボトル水も無料でたっぷり。でも、できれば温泉を飲みましょう。
スイートルームの露天風呂。ほんのりと緑色がかっているが、硫黄の薫りは少なく、温度も低い(温度調整機で40℃まで温められる)。
スイートルームのゴージャスなシャワールーム。ここに流れるお湯や水も温泉(か、温泉を冷ましたもの)。スタンダード・ルームも同様。
アメリカの温泉ホテルには、レストランがないところが多いし、あってもまずかったりする。が! シカモア温泉はおいしいです。それに、グルメにしては値段もリーゾナブル。サーモンのレモンペパー焼き、$34.00。ルームサービスを頼めば、アメリカ版「料理部屋出し」に(残念ながら宿泊費には含まれていません)。
16oz(約450グラム)のリブアイ・ステーキ($48.00)。一人前でもガッツリ二人分のボリューム。
シカモア温泉の全景。右上に日帰り温泉の露天風呂戀群。中央が温泉成分が濃くオススメのハーモニー棟。左にスイート棟。
レストランの内部とガーデン・レストラン。
シカモア温泉は広い。敷地内を川が流れる。トレッキング・コースもあり、頂上からは太平洋を臨める。
Sycamore Mineral Springs Resort & Spaaddress:1215 Avila Beach Dr. San Luis Obispo, CA93405phone:(805)595-7302料金:スタンダード・ツイン=$199.00+tax〜。アムトラック、サンルイス・オビスポ駅から送迎あり(要予約)。石鹸、シャンプー、リンス、ドライヤー、バスローブ。宿泊客は、向かいにある「アビラ温泉」も無料で使用可。
シカモア温泉は、ロサンゼルスとサンフランシスコの真ん中辺りにあります。