Yukiko Yanagida's blog

柳田由紀子(やなぎだゆきこ)=むかし編集者、いまノンフィクション作家、在ロサンゼルス。最新刊『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』(集英社文庫)で第69回日本エッセイストクラブ賞。米国人の夫と二人暮らし。家事もけっこう真面目にやってます。オフィシャルサイト=www.yukikoyanagida.com

硫黄が薫る個室露天風呂の宿、カリフォルニア州「シカモア温泉」

 このブログで他にも紹介してきたように、アメリカにはいっぱい温泉がある。  

  1. ヨーロッパの伝統を継承した「飲泉中心」の療養温泉。  
  2. 自然回帰派のヒッピーが保護する「大自然」の露天温泉。  
  3. 家族総出で楽しめる保養地の「温泉プール」。  

 でも、日本人好みという点では、ここがピカイチだと思う。カリフォルニア州中部、サンルイス・オビスポにある「シカモア温泉」。シカモアは、鈴懸の木の意。その名の通り、シカモア温泉は、鈴懸や樫の木立ちに囲まれた広大な敷地(約12万坪)に、南仏風の瀟洒な建物が立つ高級温泉ホテルだ。 

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photograph/ courtesy of Sycamore Mineral Springs Resort and Spa

 では、何が日本人好みかというと——

  1. 客室に露天風呂が付いているので、で入浴できる。
  2. 温泉を好みの温度に調整できるから、欧米では珍しく熱い湯を楽しめる。  
  3. 客室にバスローブあり。レストランを含む敷地内はどこでも着用OKなので、浴衣でブラブラ感を味わえる。
  4. レストランがあり、グルメ料理を堪能できる。  
  5. スタッフが親切。日本旅館のようなホスピタリティを感じる。  
  6. 源泉が4カ所もあり、掛け流しである。
  7. 泉質は、源泉によってカルシウムー炭酸水素塩・硫酸塩泉」または「炭酸水素塩泉に近い単純温泉」。うっすらと緑がかった温泉には硫酸塩が含まれているため、多くの日本人が好む硫黄の薫りがする。
  8. 日帰り温泉用の露天風呂が24もある。

シカモア温泉の写真

 どうです、好みでしょう? 上写真は、木立に囲まれた日帰り用露天風呂。要予約。ひとり1時間$19.00〜。湯桶がないので「マイ湯桶」を持参しよう(笑)。photograph/ courtesy of Sycamore Mineral Springs Resort & Spa

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 シカモア温泉の歴史は、西部開拓期に遡る。1886年、石油掘削中の開拓者が、石油ならぬ温泉を掘り当てた。そこで温泉施設を開くと人気に。20世紀初頭には鉄道も乗り入れ、サンフランシスコやロサンゼルスから千客万来。ハリウッド・スターも逗留しステイタスが向上、名湯の名を欲しいままにして今日にいたる。

シカモア温泉の写真

1900年頃のホテル案内より。

 シカモア温泉でとにかく感心するのは源泉の豊富さ。タンクで冷ました温泉を、庭の樹木にまで注いでいるというのだから相当なものだ。もちろん、客室内の水やお湯も温泉で、飲泉療法にもバッチリだ。

シカモア温泉の写真

 敷地内に源泉が4つ。人物の後ろにあるのが、4カ所の内のひとつ。

 ひとつだけ残念なのは、行政の規則で日帰り温泉用露天風呂に塩素を入れていることと、温度が低いこと(40℃以下)。が、これはルールなので仕方がない。客室は源泉掛け流しなので、できれば奮発して宿泊してください。バスローブのまま喰っちゃ寝て、温泉に浸かってまた寝て、たまに森林浴を楽しんで。ノンシャランな1日は、きっとあなたを再生させてくれます。

シカモア温泉の写真 シカモア温泉の写真

 客室は、スタンダード、スイート、キャビン(ゲストハウス)の3タイプ。すべて露天風呂付き。スタンダード・ルーム($259.00+tax〜/ハーモニー棟)が、もっとも硫黄の薫りが強く、温泉の温度も高い。日本人好みの42度も楽勝です。(左/上)は温泉入れたて、ほんのりと緑がかった透明。(右/下)少し時間が経ち、空気に触れると白濁する。

シカモア温泉の写真
 スタンダード・ルームの露天風呂。蛇口をひねれば源泉掛け流し。湯船に、好きなだけ温泉を注げる。日本のシケた循環式とは、スケールが違います。左端に、マイ湯桶が見える(笑)。 
 

シカモア温泉の写真

 スイートルーム($429.00+tax)には、暖炉、居間、寝室、そしてもちろん露天風呂も。コーヒーメーカーもあり、コーヒーや紅茶、ボトル水も無料でたっぷり。でも、できれば温泉を飲みましょう。

シカモア温泉の写真

 スイートルームの露天風呂。ほんのりと緑色がかっているが、硫黄の薫りは少なく、温度も低い(温度調整機で40℃まで温められる)。

シカモア温泉の写真

 スイートルームのゴージャスなシャワールーム。ここに流れるお湯や水も温泉(か、温泉を冷ましたもの)。スタンダード・ルームも同様。

シカモア温泉の写真

 アメリカの温泉ホテルには、レストランがないところが多いし、あってもまずかったりする。が! シカモア温泉はおいしいです。それに、グルメにしては値段もリーゾナブル。サーモンのレモンペパー焼き、$34.00。ルームサービスを頼めば、アメリカ版「料理部屋出し」に(残念ながら宿泊費には含まれていません)。

シカモア温泉の写真

 16oz(約450グラム)のリブアイ・ステーキ($48.00)。一人前でもガッツリ二人分のボリューム。

シカモア温泉の写真

 シカモア温泉の全景。右上に日帰り温泉の露天風呂戀群。中央が温泉成分が濃くオススメのハーモニー棟。左にスイート棟。

シカモア温泉の写真 シカモア温泉の写真

レストランの内部とガーデン・レストラン。

シカモア温泉の写真

ロビーやレストランがある母屋。南仏風建物が、敷地内に点在。
 
シカモア温泉の写真
レンタサイクルやエステ、ヨガや太極拳教室も。
 

シカモア温泉の写真

シカモア温泉は広い。敷地内を川が流れる。トレッキング・コースもあり、頂上からは太平洋を臨める。

シカモア温泉の写真

歩きたくない人は、電気自動車で運転手さんが運んでくれます。無料。
 

シカモア温泉の写真

Sycamore Mineral Springs Resort & Spa
address:1215 Avila Beach Dr. San Luis Obispo, CA93405
phone:(805)595-7302
料金:スタンダード・ツイン=$199.00+tax〜。
アムトラック、サンルイス・オビスポ駅から送迎あり(要予約)。
石鹸、シャンプー、リンス、ドライヤー、バスローブ。
宿泊客は、向かいにある「アビラ温泉」も無料で使用可。
シカモア温泉の写真

 

 シカモア温泉は、ロサンゼルスとサンフランシスコの真ん中辺りにあります。

*温泉分析協力/温泉ソムリエ協会、遠間和広氏