Yukiko Yanagida's blog

柳田由紀子(やなぎだゆきこ)=むかし編集者、いまノンフィクション作家、在ロサンゼルス。最新刊『宿無し弘文ースティーブ・ジョブズの禅僧』(集英社文庫)で第69回日本エッセイストクラブ賞。米国人の夫と二人暮らし。家事もけっこう真面目にやってます。オフィシャルサイト=www.yukikoyanagida.com

黄金ラッシュの夢の跡:「マーシャル・ゴールド・ディスカバリー州立公園」を訪ねる。

49ers(フォーティナイナーズ)」という英語を聞いたことがあると思います。これは、1848年にカリフォルニア州エルドラド郡コロマで金が発見されたことを受けて、一攫千金を求めて殺到した人々を指す言葉。たとえば、NFLの「サンフランシスコ49ers」は、ここから命名されたチーム名です。かつて、金が発見された場所は、現在、「マーシャル・ゴールド・ディスカバリー州立公園」になっていて、20以上の歴史的建造物が保存、復元されています。

           f:id:yukikoyanagida:20190704004229j:plain 

 これが、1848年1月24日に金が発見された製材所(レプリカ)。さまざまな悲喜劇が生まれた歴史的名所。

         f:id:yukikoyanagida:20190704011305j:plain

 製材所のすぐそばを流れるアメリカ川。コロマの夏は暑い。シエラの雪解け水をたたえた川は、凍えるほどの冷たさ。でも、暑い日に足をチャプチャプするにはうってつけです。この公園は、ハイキングやピクニックにも最適。

         f:id:yukikoyanagida:20190709154139j:plain

 野外博物館があり、ちょっと登呂遺跡みたいな感じ。

            f:id:yukikoyanagida:20190709154848j:plain

 園内地図。クリックして拡大版を見てください。けっこういろいろなものがあるんです。

 コロマは、カリフォルニア州都、サクラメントから車で約1時間の地です。実は、私が「マーシャル・ゴールド・ディスカバリー州立公園」を訪ねたのは、若松コロニー(あるいは若松ファームに寄ったついででした。ついでだったのですが、しかし、これがなかなか興味深かった! ところで、若松コロニーとは、おそらくは、アメリカ本土に移住した最初の日本人グループが開拓した農園のこと。日本人の一団は、戊辰戦争に敗れた会津の人々でした(↓)。そして、若松コロニーと州立公園は約3.5キロ、車でほんの5分という近さなのです。

yukikoyanagida.hateblo.jp

        

 コロナで金が発見されると、アメリカ全土はもとより海外からも人々が殺到。辺鄙な村は急速に成長し、雑貨屋、銀行、郵便局などが揃う1万人の街に発展しました。日本人では、かのジョン万次郎が、日本帰国の資金作りのために数カ月間、金採掘の仕事をしています。 

           f:id:yukikoyanagida:20190704004914j:plain

 製材所の周囲には、たくさんの解説が掲示されている。わかりやすい英語で、歴史を学べる。

         f:id:yukikoyanagida:20190704020659j:plain

 復元前の製材所の写真(↑)も掲示。          

          f:id:yukikoyanagida:20190704012026j:plain

 ゴールドラッシュの一行にはモルモン教徒も。彼らの小屋。ガイドも当時の服装で対応。金を探し当てた者たちは、酒池肉林に溺れるなど不幸な運命を辿ることが多かったが、モルモン教徒だけは堅実に貯蓄、運用。その資金を、ソルトレイクシティの大聖堂建造に実らせたという。        

         f:id:yukikoyanagida:20190711202554j:plain

 中国人移民用の換金所&商店。1840年、アヘン戦争に敗れた中国からも、たくさんの人々が金を求めてコロナに移住した。店内の様子も復元されていて大変エキゾチック。

         f:id:yukikoyanagida:20190709161002j:plain

 砂金取りの体験コーナーも。

         f:id:yukikoyanagida:20190709161635j:plain

 かつての試金所も復元。

         f:id:yukikoyanagida:20190704015210j:plain

 人々が集まれば犯罪も起きる。こちらは刑務所。

         f:id:yukikoyanagida:20190704012345j:plain

 屋外博に加えて、立派な屋内博物館も。コロマ行き旅券の広告や古地図などを展示。金の採掘法も説明されている。

 金は当初、川から拾っていたのですが、次第に土地を掘るようになり、最後にはその規模も大きくなって、川の流れが変わるほどの自然破壊がなされたといいます。実は、若松コロニーは短命のうちに崩壊したのですが、その原因のひとつに土壌汚染説があります。若松コロニーの水源が金属に汚染され、作物が育たなかった可能性が指摘されているのです。

           f:id:yukikoyanagida:20190704010924j:plain

 金を発見したジェームス・マーシャルの銅像。銅像は公園の南にある。公園南部には他に、パイオニア墓地があり若松コロニーの桜井松之助の墓も。

           f:id:yukikoyanagida:20190704020557j:plain

 園内の軽食カフェ、Argonaut Farm to Fork Cafe. なかなか気のきいたものを出していた。園内には他に食事処なし。

         f:id:yukikoyanagida:20190709161206j:plain

 公園の近くの繁華街は、車で約20分のプレサーヴィル(Placerville)。私が訪ねた時は、ちょうどパレードをやっていてラッキー。レストランもたくさんある。

【広告:下に記事つづく】
 

 先にも書いたように、金を採掘した者たちの大半は、意に反して財を成すことができませんでした。反対に富を得たのは、採掘者にサービスを施した会社の創業者たちです。作業用ジーンズを生産、発売したリーバイス、銀行業のウエルス・ファーゴ、大陸横断のセントラルパシフック鉄道(創立者はスタンフォード大学のスタンフォードさん)……。このあたりの事情は野口悠紀雄の以下の本に詳しく、とてもエキサイティングです。

アメリカ型成功者の物語―ゴールドラッシュとシリコンバレー (新潮文庫)

アメリカ型成功者の物語―ゴールドラッシュとシリコンバレー (新潮文庫)

 金が発見された土地の権利者、ジョン・サッターの野望と挫折を描いたノンフィクション(↓)。発見者のマーシャルは、サッターの大工さん。詳細が語られているが、文章がやや読みづらいのが難。

果てしなき欲望―サッター将軍の金塊 (ザ・アメリカ 勝者の歴史)

果てしなき欲望―サッター将軍の金塊 (ザ・アメリカ 勝者の歴史)

 

  山本一力の以下の小説は、この時代を描いた冒険活劇。私は未読なのですが、コロナやジョン万次郎も登場するようです。 

桑港特急 (文春文庫)

桑港特急 (文春文庫)

Marchall Gold Discovery State Historic Park

 

address: 310 Bacl Street Coloma, CA 96513 

phone: 530-622-3470

開演時間、ガイドツアーほかの詳細は以下

Marshall Gold Discovery SHP