世界120カ国に約3万7000軒もの店舗がある一大外食チェーン、マクドナルド。そのマクドナルド最古の店は、ロサンゼルス郊外のダウニーにあります。
ダウニー店(↑)。現在普及しているM型ではなく、創業者のマクドナルド兄弟が考案した「黄金のアーチ」が両脇を飾る。店舗にはオールディーズが流れ、厨房内もノスタルジック。
ダウニー店で人々を迎えるのは、初代マスコットの「スピーディ」が手招くノスタルジックな看板(↑)。店舗自体も、時代を感じさせるドライブイン・レストラン風です。
ドライブイン・レストランとは、戦後から1950年代に流行した、車内で食べる式のレストラン。カーホップと呼ばれたウエイトレスやウエイターが、車内の人々から注文を取り車まで給仕しました。したがって、店舗前に広い駐車スペースがあるのが特徴です。そう、映画『アメリカン・グラフィティ』に出てきたあれ! あれがドライブイン食堂です。
マクドナルドの創業者は、リチャードとモーリスのマクドナルド兄弟。2人が、「ルート66」の終点に程近いサンバーナーディーノで営業していたドライブイン・レストランを、世界初のファストフード店に切り替えたのは1948年。建物の外観はほぼそのままに、経費のかかるカーホップを解雇し、皿やグラスを紙コップや紙袋に変え、工場の組立ラインの原理を調理場に採用しました。値段の安さとスピード感に兄弟の店は大繁盛します(↓)。
兄弟は1953年からフランチャイズも手がけましたが、ダウニー店はその1店舗でした(↓)。
53年開店時の写真とポスター。当時、ハンバーガーは15セント、フレンチフライは12セント。
一方、翌1954年、兄弟の前に現れたのが、後に現マクドナルド社を創立し、世界的企業に育て上げたレイ・クロックです。クロックは、兄弟から強引にフランチャイズ権を買い取ると、これまた強引な手法で兄弟を排除していきました。そして、ひとり勝ちした後には、ドライブイン・レストラン風店舗を現代的な建造物に変えていきました(1号店のサンバーナーディノ店は、1972年に解体)。 昨年末に公開された映画『The Founder』(↓)は、兄弟とクロックの攻防を伝え興味深いです。
他に、この本(↓)にもマクドナルドの歴史が綴られていておススメです。
ダウニー店がドライブイン・レストラン風な姿を維持できたのは、フランチャイズ権を直接マクドナルド兄弟から買っていたため、クロックの手が伸びなかったから。
同店は結局、1990年にマクドナルド社傘下に入りましたが、この時点でドライブイン・レストラン風建築物は既に貴重だったため、同社は建物を保存しました。また、小さな博物館(↓)も併設してマクドナルドの歴史を伝えています。
博物館は入場無料。開店時の写真、歴代のマスコットや紙コップ、マックの歴史を語るビデオなど。
ただし(というか無論か)、この博物館にマクドナルド兄弟の足跡はほぼ見られず、レイ・クロック色で一杯。その意味で、資本主義の厳しさをヒシヒシと伝えるスポットでもあります。 え? マックの味ですか? 他の店舗と同じでした!
ハンバーガーの味は他の店と同じですが、ダウニー店の値段表は昔風。なお、メニューは昔からあるもののみで、品揃えは他店より少ない。
McDonald, Downey
10207 Lakewood Blvd., Downey, CA90241 tel./562-622-9248